324JP村尾先生のインタビュー

模擬講義教員インタビュー 村尾先生

今行っている、または行おうとしている研究について教えてください。

村尾先生

これまで都市の発展が防災にどう影響を与えるのかという研究をミャンマーやペルーを対象にやってきました。また東日本大震災をはじめとして、1999年台湾集集地震や2004 年インド洋津波後の都市復興に関する研究もしてきました。最近では、今から100年前に発生した関東大震災が首都圏にどんな影響を与えてきたかを研究しています。

研究者に必要なのはどのような能力ですか。

村尾先生

好奇心やものを形にする能力が大切です。 研究とは今現在明らかになっていないことを明らかにする行為です。 かつてアフリカは未知の開拓地で暗黒大陸と呼ばれ、欧米人が率先して不明なことを明らかにしてきました。 今ではこうした未開拓地は世界中で少なくなっ てきましたが、知の世界ではまだわからないことが多く、冒険すべき研究領域がたくさん残されています。高校までは問題を与えられてそれを解く能力が求められてきましたが、大学では自分がこうした冒険すべき領域を自ら見つけて、問題を解く能力が求められます。そのため、今の生活に満足せず自分で様々な経験をして、問題意識を持つことも大切です。さらに、現在の世の中では便利な道具が溢れているため、学生が道具を持っているか持っていないかによる差別化は少なくなっているので、自分の考えがどこにあるのか、そしてどう表現するのかという哲学とプレゼンテーション能力がより一層重要になっていると思います。

東北大学ならではの魅力は何でしょうか。

村尾先生

日本の中で東大、京大に続いて三番目に出来た大学であり、学生からすればすばらしい環境と資源が提供される学びの場になっています。災害科学を研究している我々にとっては東日本大震災からの復興・被災の現場を研究する上で重要な場所にある大学でもあります。さらに、世界中の研究機関との連携も多いので、今後の国際化を踏まえて学生が自己実現をしていくうえで様々な機会が得られるのではないでしょうか。

仙台のおすすめスポットやお店はありますか。

村尾先生

建築家の伊東豊雄氏が設計したメディアテークはデザインや建築において自身がクリエイ ティブに活動する上で栄養を与えてくれる建造物です。また、宮城県立美術館は20世紀の巨匠であるル・コルビュジエの弟子である前川國男氏が設計した重要な建物です。建築や 都市計画に関心のある学生にとってはぜひ訪れてほしい場所です。また、大学生になるとお酒を飲む機会もありますが、国分町は東北一の繁華街で東北大学で学生時代を過ごす人達にとっていい思い出を与えてくれる場所だと思います。

大学生に伝えたいことはありますか。

村尾先生

まずは夢を持つことが大切です。しかし、最近の学生を見ていると、「将来何がしたいのか」「何のために大学に来ているのか」 などがわからないという人がたくさんいるように思います。夢を持つためには、「体験」「苦難」「問題意識」「強い動機」「知識と技術の習得」「行動」「実現 」というプロセスが必要かと思います。まずは「体験」です。インターネットなどの普及により、家にいながら何でも出来てしまう世の中になってしまいました。しかし、身体を使って体験することが重要です。例えば、知らない海外の場所に一人旅に出て、現地の人と触れ合ってください。バスの乗り方もわからない、レストランでの注文の仕方もわからないなど、不便を感じるはずです。嫌なこともあるでしょう。日本とは異なる別の社会や文化に接することでこれまで便利だと思っていたこと、当たり前だと思っていたことが覆されます。これはおかしい」「何でこんな目に会うのだろう」「○○はこうあるべきなのではないか」などの問題意識を持てたら大成功です。そうした中で、自分の心の奥深くから本当に自分がやりたいこと、取り組むべきことが見えてきたら、それを実現するために必要な知識や技術を学びたくなります。本来、そうした動機があって、大学などがそれを提供する場であったはずなのです。そうした自らの体験に基づく学びの動機が生まれた時に、自分の武器として知識や技術を吸収したいという欲望が生まれます。あとはそれに向かって突き進むだけです。ひとつひとつ必要なものを身につけ、自らの経験値、体力、知識等を増やしていき、少しずつ敵 (夢を叶えるためにクリアすべき困難)を倒していく。それは流行りのロールプレイングゲームと同じようなもので、大変楽しいプロセスです。大学や勉強がつまらなくなったと いう人がいたら、ぜひ人生の原点に戻るために一人旅に出てほしいと思います。「タイパ(タイム・パフォーマンス)」という言葉が最近聞かれますが、それは目先のゴールを目指した効率性を追求しているだけに過ぎません。長い目で見た人生の目的は自ら決めるべきであり、そのためには無駄なことがたくさん必要なのだと思います。「タイパ」に揺さぶられることなく、一人一人の人生を自分のペースで味わいながら進んでいってほしいと思います。

error: