模擬講義

キ1 模擬講義

熱電発電が創るクリーンな未来

工学研究科 林慶先生

B204
11/5(金)13:30-14:30

エネルギー資源を有効に利用するために『熱電発電』が注目されています。
熱電発電は熱電変換材料を用いたクリーンな発電技術で、未利用の熱を利用して電気エネルギーを得ることができます。
模擬講義では、エネルギー問題と熱電発電について説明した後、私たちが開発した熱電変換材料や熱電発電デバイスを紹介します。

Q.専門分野に興味を抱いたきっかけを教えてください。
A.東北大学工学部に赴任してくる前、私は理学部の物理分野の仕事や研究をしていました。その当時、祖父に自分の研究内容を言ったことがあるのですが、その時に祖父に言われたことが「世の中に役立つことをしろよ」というものでした。私自身、当時の研究が楽しかったのであまり疑問に思わなかったのですが、その言葉を受けて世の中に役立つことをする大切さを再認識しました。これが一つ目のきっかけですね。現在私は熱電材料の開発をしているのですが、これを始めようと思ったもう一つのきっかけは、ちょうど私が大学を卒業する頃、環境問題への関心が高まっていたことです。何か社会に貢献できることを考えて、今現在の専門に至りました。  

Q.先生がお考えになる東北大学の特徴を教えてください。
A.東北大学の外部から見た時、東北大学の強みは「物を作る」という点だと思います。別の大学でも「物を作る」ということはあったのですが、東北大学は特に強いと思いますね。「物を作る」時には物理学の知識も必要になってきます。工学と物理学の両方の視点も持っているのはとても良かったかなと思っています。大学の環境は非常に良いのですが、山の上にあるので交通の便がよくないかもしれません(笑)。逆に言うと研究に専念できるということでもあるのでその点ではいいと思います。

Q.先生から見た東北大生の印象を教えてください。
A.東北大生は素直です。素直さは研究をするうえでとても大切なので良いところだと思います。しかし、逆に言うと疑うことがないとも捉えられます。研究は疑わないと進みません。色々な人が研究をしていく中で得られたデータを全て真実として受け止めず、何が真実なのかしっかり考えて自分の研究に取り込んでいかないと、かえって遠回りをすることもあります。もっと疑ってもいいのかなと思いますね。

Q.先生の大学生時代について教えてください。
A.研究に関していえば、情報を集めるということを頑張りました。今と違い、インターネットが普及していなかったので、いっぱい本を読みました。本に載ってないようなことは、研究者のところに伺って学ばなくてはいけません。他の研究者がどのような研究をしているのかを聞きにいかないといけないわけです。サークルやアルバイトに関していえば、サークルは最初テニスサークルに入っていました。しかし自分に合わず辞めてしまいました(笑)。その後ボーイスカウトのような活動をしていました。またアルバイトでは塾講師や家庭教師をやっていました。これらの活動やアルバイトで様々な考えの人たちと関わることができ、色々なものの見方ができるようになったのが良かったですね。

Q.講義に先駆けて一言お願いします。
A.まだ模擬講義の内容をどのようなものにするか悩んでいる状態です。自分が今やっている研究は結構デリケートな問題を抱えています。例えば化石燃料を使った発電方法をどう考えるかについていえば、反対意見もあれば賛成意見もあり、政治活動や経済活動にも結びついていて難しい問題です。私自身今の研究を悩みながらやっています。研究の内容説明だけではなく、研究者が研究をするうえで抱えている考え方や葛藤などについてもお話できたらいいなと思っています。

ニューロロボティクス 
‐人の運動と学習から学ぶロボティクス‐

ニューロロボティクス 
‐人の運動と
学習から学ぶロボティクス‐

工学研究科 林部充宏先生

B204
11/6(土)10:30-11:30

最近、何かと話題のAI。
人間の仕事がAIにとってかわられる日がやってくるなどと言われますが、人間が何気なく行っていることを、AIにやってもらうことは、現段階ではできていません。
人間は自分の経験に基づいて予測して環境適応し、効率的に動くことができます。ここが人間と機械の異なる点のひとつで、私の研究室では人間のようにエネルギー効率の良い運動制御ができないものかと日夜研究しています。
人間を知るためにロボティクスを使い、ロボットを向上させるため人間の学習能力の研究を行うニューロロボティクスと医学応用について紹介します。

Q.専門分野に興味を抱いたきっかけを教えてください。
A.子供の時にプラモデルが好きで、プラモデルを作るだけではなく、設計などにも興味がありました。機械やロボットはものづくりの技術であり、物を作るために役立つ技術を研究したくて機械系の分野に入りました。

Q.先生がお考えになる東北大学の特徴を教えてください。
A.私は関東出身であまり東北のことは知りませんでしたが、来てみると意外に東京に近いという印象を持ちました。東京では通勤、通学に時間はかかるし、人も多いですが、仙台は町がコンパクトでキャンパスの敷地もしっかりと確保されています。この環境は日本には意外と少なく、都会とはまた違ったゆとりあるキャンパスが作られており、それでいて町との距離も近いという、広さと一体感の両方を兼ね備えている点です。

Q.先生から見た東北大生の印象を教えてください。
A.1つ目は様々な地域から生徒が集まっている点です。様々な背景を持つ人々と出会えることだと思います。 2つ目は非常に素直だということです。物事を吸収するには素直さは必須だと思います。それでいて主体性もある。この素直さと主体性のバランスが取れているのもいいと思います。

Q.先生ご自身の大学生時代について教えてください。
A.サークルは登山サークルに入っていました。登山で体力や精神力が磨かれていきましたし、ゴールは遠くても1歩1歩着実に上ることで頂上に着くという経験をできたのはよかったと思います。  勉学に関しては意欲的に行っていましたが、大学教員になるつもりは最初はありませんでした。興味を持ったことを研究するうちに今の道に入っていったという感じです。

Q.模擬講義に先駆けて一言お願いします。
A.内容的にはロボットをいかに生物に近づけるかという研究に関するものですが、この研究をしているうちに人間のすごさというものもわかってきます。人間とロボットの両方を知ることで、社会にとってロボットをどのように生かしていくかについて考えていただけたら、いいと思います。

日本の雇用はどう変わるか

経済学研究科 川端望先生

B204
11/6(土)13:30-14:30

この講義は,日本の雇用のしくみを扱います。「終身雇用」「年功序列」「企業別労働組合」といった日本の「正社員」の雇用のしくみは,なぜ頑強に生き残ってきたのか。なぜ非正規雇用が拡大しているのか。いま何が変わろうとしているのか。社会科学の視点からお話しします。

Q.専門分野に興味を抱いたきっかけを教えてください。
A.私が大学院生だった1980年代はアメリカ産業が一部衰退し始めており、日本がそれに追いつきつつありました。当時私は衰退しつつある先進国の経済がどのようにリストラクチャリングされるのかに興味があり、研究していました。そのなかでも企業の合併買収や外資の導入などに取り組んで再編成しようとしている鉄鋼業を事例に研究しました。その後就職してから、アジアの鉄鋼業の発展を目にするようになりました。アジアの発展途上国が産業化していくにあたって、多くの資本と技術を必要とする鉄鋼業をどのように発展させていくのかについて注目するようになりました。かくしてアジアの鉄鋼業を専門に扱うようになりました。

Q.先生がお考えになる東北大学の特徴を教えてください。
A.研究や教育のレベルがかなり高く、世界最先端の研究がなされている分野もあります。レベルの高い研究が教育に反映され、かつ学生が本気になればかなり高いレベルのことまで学べるという、古典的な大学のあり方がちゃんと成立しています。また大学全体がとにかく「授業をやって、研究をやって、学ぼう」という愚直な雰囲気ですので、真正面から学ぶことができる大学といった印象ですね。

Q.先生から見た東北大生の印象を教えてください。
A.良い面としては、真面目によく学んで考える力を持っている学生が多いという印象を受けます。例えば、東北大生は間違いを含んだ発言に対して、いい加減に聞き流さず、積極的に食いついて吟味し、話を深めていく力があると思います。今の時代、ネットで沢山の情報を得ることができ、表面的な知識を広げることが容易な一方で、どれが正しい情報か、何を指針にとして生きていけばいいかを判断するのが難しくなっています。そんな中、それらを吟味し考える習慣をもっているということは東北大生の良い点ではないでしょうか。逆に弱点としては、経済学部に関していうと、尖った姿勢があまり見受けられないという印象ですね。積極的に起業をしたり、新しいビジネスを立ち上げようという前向きな姿勢が少し弱いかもしれませんね。

Q.先生の大学生時代について教えてください。
A.私が東北大学経済学部に入学したのは1983年です。当時から既に大学生というのは遊びまくるものになっていました(笑)。ただし今とは違い、ネットがありませんでした。何で遊んでいたかというと、サークル等です。大学には来ても授業には出ないわけです(笑)。また、イベントとしては女子大の大学祭や東京の大学の学祭に行くということがありました。そういう雰囲気の時代でしたね。  最初はそういう雰囲気につかっていたのですが、やがて社会問題に関心を持ち、当時すでに流行らなくなっていた学生運動にも取り組みました。私が学生だったのは、育英会(現在の日本学生支援機構)奨学金に初めて利子がついた時で、それに対する反対運動などをしました。しかし、これまた勉強していないから、行き詰まるのです。  なので学部生の頃は、指導教官に「運動ばかりして勉強しない者は、将来破綻する」と厳しく怒られて大変でした。しかし先生の言う通りで、経済の仕組みをよく学ばずに社会問題に立ち向かっても歯が立たないのです。この反省が、研究への動機になったと思います。

Q.講義に先駆けて一言お願いします。
A.講義では大きく分けて二つの論点をお話ししたいと思います。一つは、日本のメンバーシップ型雇用という独特な枠組みが近年経済的に行き詰っている原因は何か、今後どのように変わっていけばいいのかという問題です。もう一つは、雇用の体系の変化で低賃金におかれる非正規労働者が増えていることが、日本社会を危機に追い込むという問題です。これらについて当日お話ししたいと考えています。

海の温暖化

理学研究科 杉本周作先生

B204
11/7(日)10:30-11:30

「海水温が高いので台風は勢力を維持します」。
このような情報に接したことがありますよね。このように海と大気はつながっているため、海が変わると気象や気候は大きく変わってしまいます。
今後、気候変化にともない激甚化するとされている気象災害に備えるために、海の現状や起こりうる変化についてお話ししたいと思います。

Q.専門分野に興味を抱いたきっかけを教えてください。
A. 小さい頃から釣りが好きで、私にとって海は近い存在でした。一方で、日々移ろいゆく天気にも興味がありました。その2つを一緒にやりたいと思い、海と大気の関係(大気海洋相互作用)を研究するに至っています。当時は学部で卒業する予定でしたが、もうちょっと、もうちょっとと思いながら研究を続けていたら大学教員になっていました(笑)。

Q.先生がお考えになる東北大学の特徴を教えてください。
A.他の大学と比べてもキャンパスが近くて一体感があり、都心部に近いというのが大きな魅力だと思います。美術館や博物館も近く「学都」という言葉が相応しいのが仙台だと思います。

Q.先生から見た東北大生の印象を教えてください。
A. 勤勉で優秀という印象をもっています。コロナ禍という状況であり、教員としても思うように授業を行えず忸怩たる思いがありますが、その辺は学生の能力の高さによって補完してもらうことで何とか成立させることができています。学生生活では勉学に励むことは当然ですが、多くの人と接するなかで知を深め世界を広げることが肝要だと思っています。一日も早いコロナの終息を願うばかりです。

Q.先生ご自身の大学生時代について教えてください。
A. ふわふわした学生生活を過ごしていたと思います。人を当てにするような生活は送るまいと決めていたので、講義は出席するようにしていました。気の合う友人と朝まで話すことや、旅行・麻雀も好きでした。当時のアルバイトは賃金が低かったので今の学生がうらやましいです。

Q.模擬講義に先駆けて一言お願いします。
A.講義を通じて海について理解を深めてもらえればと願っています。私たちは海に囲まれた国に住んでいますので、海の色々な役割・意味について考えるきっかけになればと思っています。海というとクジラとか生き物を連想されるかたが多いですが、私の専門は「物理」です。でも、数式とかは一切出てきませんので、映像を見る感覚で聴いてもらえると嬉しいです。

「トンペイ 」の誕生-東北大学の歴史から

「トンペイ 」の誕生
-東北大学の歴史から

高度教養教育・学生支援機構  中川学先生

B204
11/7(日)13:30-14:30

「トンペイ」の愛称で知られる東北大学。
その誕生には、日本社会を揺るがした著名な事件が関わっていました。
本講義では、当時の歴史的史料を一緒に読みながら、大学創設の実態とその背景に迫ってみたいと思います。
史料解読とペアワークを取り入れた講義を体験してみませんか。

Q.先生がお考えになる東北大学の特徴を教えてください。
A.やっぱり環境がいいですね。特に学生の立場から見た時、大きな図書館があり、自然に囲まれているという環境はいいです。またST比率(学生の割合に対して教員がどれくらいいるかを計る尺度)を見た時、東北大学はかなり上位にいます。つまり、より手厚い教育ができる環境が整っているということです。仙台という適度に都会で適度に田舎な場所で勉強できるのはいいですね。

Q.先生から見た東北大生の印象を教えてください。
A.全体としてとても真面目な学生さんが多いですね。特に授業に対する態度としては私語もなく、基本的に真面目に取り組む学生さんが凄く多いです。びっくりするくらい真面目。少し真面目過ぎるくらいかな(笑)教師にとっては理想的です。また、留学生の人は授業中わからないことがあれば積極的に質問してくれます。そこは日本と海外の文化的な違いかなとは思います。

Q.先生の大学生時代について教えてください。
A.私は東北大学文学部出身で、言いにくい話、真面目な学生ではありませんでした(笑)基本的にサークル活動に没頭していて、授業の成績もあまりよくなく、ちょっと不真面目でした(笑)大学院に進学する頃から真面目に取り組み始めた感じです。それまでは基本的にサークルやアルバイトが一生懸命でした。サークルは卓球をしていて、アルバイトは家庭教師をやっていました。家庭教師は時給が高く、割がよかったですね。

Q.講義に先駆けて一言お願いします。
A.まずは、普段自分がやっている授業を追体験してもらえればなと思います。この講義内容は東北大学の一年生に初めて受けてもらう教養科目の中の一つです。東北大生の受けている授業をリラックスしながら体験してほしいです。合わせて東北大学の特徴についても知ってもらえたらいいなと思います。私自身当日緊張しているかもしれないので、あまり体に力を入れすぎないでリラックスして聞いてもらえたらいいなと思っています。

Q.東北大学を志望している方に向けて一言お願いします。
A.大学を選ぶ際、色々な情報が錯綜していてなかなか大変だと思いますが、東北大学は色々なニーズを持つ学生さんを受け入れるだけの懐の深さがある大学だと思います。教員やスタッフも六千人くらいいるので、皆さんをサポートする準備はできています。そのため、自分なりに興味関心を持って大学に飛び込んできてもらえれば、それに答えることができると思います。東北大学についてわからないことがあれば今回の模擬講義で聞いてもらってもいいですし、色々なかたちでアプローチしてもらえればいいかなと思います。